忌野清志郎


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忌野清志郎

 「中型で勢力の強い台風14号により…」と天気予報がライブの前々日あたりから、 雲行きの怪しいニュースを流していた。「清志郎vs台風14号」。さすがの清志郎のパ ワーも自然の猛威にはかなわないだろうと思いきや、当日の軍配は彼に上がり、心配 された強風と豪雨は、秋晴れの陽気と涼しく心地良い風となって大阪城野外音楽堂に 訪れた。

 いっぱいとなった場内の雰囲気は、黒服娘であふれかえるバンドのライブとは、ま た違った威圧感を持ち、男女比率や年令層といった境界線は不要だ。年令不詳のサイ ケやロッカーたちが目に付き、まだ幼稚園にも行っていないような子供が客席を駆け 回っていたり、入場前に持ち込み不可と告げられたアルコールを体内に蓄積し、ハイ な気分となった一団がすでに盛り上がっていたりする。

 定刻の17時を少し過ぎて、いよいよメンバーがステージに現れ、1曲目から総立ち となった客席は、清志郎の登場を盛大な歓声をもって迎え入れた。ハデな帽子、ハデ なジャケット、ハデなシャツ、ハデなパンツ、手には花束というだれもマネできない ファッションで身を固めている。しかし、彼自身のキャラクターの方が、そんな衣装 よりも強烈なインパクトを放っているのだ。

 今年でデビュー25周年を迎える清志郎のエンターテイナーぶりは、時代の流れに影 響されることなく永遠に不変であることを痛感させ、バックのサウンドが、フォーク 、ロック、ブルースと何に変わろうが、メインである清志郎の歌は変化しない。どん なサウンドにも同調はするが、けっして同化することはない強烈な個性を歌自体が持 ち、清志郎節とも呼べる独特の旋律と歌詞が押し寄せてくる。そんな清志郎の歌とキ ャラクターが、ぐいぐいと観客を引き込んでいく。

 「台風が来てもハレルヤ〜。天気予報が雨でもハレルヤ〜。大阪ベイベー!」とい つもの口調で客を煽り立て、「悪い星の下に」ではフライングVを持ち、ネックをマ イクスタンドに擦り付けたりと期待通りのパフォーマンスも披露してくれる清志郎。 一人のロックシンガーというレベルではなく、エキセントリックなロックスターとし ての貫禄があり、その存在感はやはり圧巻である。

 まだまだ序盤の8曲目だというのに、RCサクセションの名曲であり、Jロックの 名曲にも数えられる「雨あがりの夜空に」がプレイされた。清志郎はステージを駆け 回り、ギターの三宅やコーラス嬢も前に出て客を煽り、客席のテンションは急速に上 昇していく。

 RCサクセションでの清志郎とギタリスト仲井戸”チャボ“麗市とのコンビネーシ ョンは有名だったが、ソロになってからはその代役をモジョクラブの三宅伸治が務め ている。当然、三宅は仲井戸になり切るのではなく、自分自身のプレイで、若干非力 ながらも「清志郎&仲井戸」とは違った「清志郎&三宅」の味を出していた。

 「ワン、ツー、さん、しぃ」の掛け声で終盤に突入。「ブン・ブン・ブン」では三 宅のギター・アプローチも曲調にマッチし、清志郎の歌声とうまく絡み合い、「RAZO R SHARP」ではバイオリニストがステージ前方に出てきて壮絶に弾きまくるといった 見せ場も用意されていた。

 本編ラストの「トランジスタ・ラジオ」では、もう客席は大合唱状態となり、15年 も前にヒットしたナンバーにも関わらず、ナツメロになることなく絶大なパワーをふ りまく。また、清志郎自身のテンションも高く、毎度のことながら観客から投げ入れ られたクラッカーをステージに寝転がって股の間で鳴らしまくっていた。

 客席からの熱烈なアンコールに応えて再登場した清志郎は、アコースティック・ギ ターを奏でながらブルージーにメンバー紹介を行い、大所帯のツアーメンバーにゲス トプレイヤーの石田長生とトロンボーンを迎え入れた。ワイルドなギタープレイを見 せる石田。清志郎との息も合っている。

 メンバー紹介や曲の間奏がやたら長く、ステージ上のにぎやかさに比べ、客席は少 々取り残された感じも一瞬あったが、「Johnny Blue」での掛け合いによって、観客 も徐々にテンションを戻し始め、「さすが『商人(あきんど)の町』。いつまでやっ ても飽きんど」と清志郎のだじゃれも出るほど、場内一体となった盛り上がりを見せる。

 「天使のハンマー」で2時間45分に及んだライブは幕を閉じた。最初から最後まで 、全くパワーダウンしない清志郎のライブパフォーマンスには頭が下がる。「デビュ ー25周年」と言われているが、本人にそんなことは全く関係ないようだ。デビュー何 年だろうが、ステージに立つ清志郎は、いつでもパワー全開なのである。そして、さ らに何年もの月日が流れようと、時代の流行に左右されることなく、常にロックスタ ーとして、Jロックシーンに君臨し続けてくれることだろう。

[撮影・佐藤潤一]