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下降線だった精神状態を、記念すべき1stソロアルバム『ONLY
YOU』をクリエイトするという建設的行為で自己治癒し、その“癒し”のパワーに身を任せるように短いインターバルで2nd『I
STAND HERE FOR
YOU』をリリースした、Jロック界のか弱きカリスマ、大槻ケンヂ。
リリースに合わせてスタートしたツアーで大阪に現れた彼に、とりあえず近頃のソロ活動について聞いておきたい質問をぶつけてみた。あまりよけいなことを考えたくない氏に、難題をぶつけた僕が掟破りだったのか、楽しいながらも「?」が連続する40分となったが…
作品の評価は気にしない方がいいみたい
●ソロ第2弾である『I STAND HERE
FOR YOU』に対する第三者の反応には納得してますか。
大槻(以下O):賛否両論、毎回いろいろあるんだけど、今回はみんな褒めてくれてうれしいなあって感じです。チャートは気にしないと言いつつも、ニッパチ(2月、8月)の不景気な時に出したんだけど、20位以内に入れたんで。邦楽アーティストの強豪がいない時に出して20位で、19位が『耳をすませば』のサントラでしたから(笑)。一番強力な邦楽が宮崎駿だった(笑)。
●チャートの話が出たんですが、自分の作品への反応を一番実感する時は、やっぱりチャートであったり、売上げの数字になるんですか。
O:どうですかね。作品に対する反応って、100年経ってから評価される場合があるじゃないですか。ほら、山田かまちさんみたいに死んだ後で評価されたりとかね。その時は、ものすごく評価されても、その後はだれも知らなくなっちゃった、一発屋みたいなのだってあるし。今のところは分かんないですよね。作品の反応ってのは、もしかしたら永久に分かんないかもしれない。だから、あんまり作品の評価とか、売上げとかは、ミュージシャンは気にしない方が良いみたいですよ。気にし出すと良い方には行かないみたい。
●音楽的にも良い方には行かない。
O:行かないでしょうね。売れなくても、今の日本で食いっぱぐれるというのは、なかなか難しいですからね(笑)。餓死することなんて難しいですからね。何とか食えちゃうから、あんまり売れた、売れないで大騒ぎしない方がいいみたいですね。
●でもライブでのお客さんの反応からは、何か実感できるんじゃないですか。
O:それもあんまり気にしない方がいいですね。僕はプロレスが好きでよく観に行くんだけど、プロレスの試合で会場が一体となって盛り上がるのはねえ、まあ三本勝負で一日だいたい6試合ぐらいあるとしたら、18試合…18分の1ぐらいですよ。18分の1でお客さんと一体化して盛り上がればいいって感じなんですよ。パチンコだったら何百分の1で、出れば儲けもんでしょ。全部のライブがお客さんと一体化して、「うあー」とならずとも、それぞれにそれぞれがライブを観て思い出が残っていれば、僕はいいかと思うんだけどね。
●やる方も、毎回毎回その何分の1の一体感を求めてばかりいては、持ちませんかね。
O:それがいけないです。それやっていると、やる気も失せるしね。よくないです、本当に。僕は昔、ライブで調子が悪いと、それを2カ月ぐらい引きずる人だったんですよ。だけどね、酷いライブをやって「また2カ月この失敗を引きずるのか…」とくさくさしてたら、渋谷の「いろはにほへと」かなんかで(笑)、グルーバーズのベースのボブさんに、「じゃあお前は、来た客をもう一度全員集めて、そこで土下座して『今日は失敗した。ごめんなさい』って謝れるのか。大槻!」と言われて、「いや、それはできないっすねえ」って答えると、「できないだろう。だからいいんだよ!」って言ってくれてね。それで「ああ、そうだよなあ」って思えて来てね。まあ今でも「ああ、今日は良くなかった」って思うと数時間ぐらいは「あ〜あ〜」って思うけど、もうあんまり(笑)。良くも悪くも引きずらなくなちゃいましたね。
●切り替えができるようになってきたと。
O:切り替えって言うか、そんなこといちいち悩んでいても何も始まらないという境地。なんかねえ、面白いことにこんな当たり前のことにどんどん気付いていくんですよ。自分が少年時代にずっと否定していた「くよくよしてても何も始まらない」とか、「良い日も悪い日もある」とか、「明けない夜は無い」とかね。なんかこう「努力をすれば報われることもある」とか、そういう「覆水盆に返らず」とか(笑)、まあ何でもいいけど、そういういかにもって言葉あったじゃないですか。だんだんだんだん一つずつ「そうだよなあ」って気付いていっちゃうんですよ。少年時代の自分を裏切っているんじゃなくて、ただ今になって気付いていくんだなあと、だんだん分かっていくんだなあと。何か、そういう気持ちになりつつありますけどね。
今一番思っていることは、「も〜うダメだ」って思っていても、人間は何とかなるみたいだってこと。次のアルバムにもラジオドラマ風に入れようかと思ってるんです。
●そんなシチュエーションを。
O:うん。YMOのCDでそんなのあったけど、崖崩れとか、戦争とか、何かとにかく大変な状況になってみんなが「もうダメだ〜」って時に、僕が出てきて「いや、それがね」って(笑)。「これがね、何とかなるんだよ。不思議だけど。これが結構何とかなるんだよ」ってのが、ちょっとだけアルバムのラストに入っているCDを作りたいなあって思ってるんですよ。
悩んでる人から異常に手紙が来るようになりました
●今回のアルバム『I STAND HERE FOR
YOU』のコンセプトとなっている「平気、へっちゃら、ここに俺がいるから」というメッセージの波及度を実感したようなことは何かありましたか。
O:病を煩っている人とか、悩んでいる人から異常に手紙が来るようになりました(笑)。その気持ちはとっても分かるんですよ。辛い人の気持ちって、多少は分かる気はするので。分かるんだけど、だけどそれに一人一人に応えちゃあいけないんですよね。そうすると、その一人を永久に面倒見なきゃあいけないから。
●一時の感情だけで構ってしまうと、無責任なことになってしまうんですよね。
O:そうなんですよ。それで、逆に逆恨みされたりするから。それに、ロッカーって言うのは、ある種のカリスマ…教祖様になることですよね。そしたら、いろんな人が悩みを打ち明けて来るんですよ。それに一回答えちゃうと、一対一になっちゃって、それは付き合い切れないから。そうするとカリスマの、教祖様の像が壊れちゃって大変なことになる。だから、教祖様たりえる大槻ケンヂのやれることは、とりあえずライブをやって、CDを出すと、それぐらいしかないんですよねえ。
●心癒し励まし型の大槻ケンヂはこのまま続くんですか。
O:いや、これからもまた大槻ケンヂは変わっていくんじゃないかと思っているんですけどね。何かこう、どういうロックをやっていくのか、どういう音楽をやっていくのか…。或いはいきなりルンバ専門の歌手になるとか(笑)。ないとは限らないですからねえ。だって堀内孝雄がねえ、まさか演歌歌手になろうとはだれも思わなかったでしょ。逆に今、堀内孝雄が昔フォークをやっていたなんて、だれも信じないでしょう。人間ってどんな風にも変わっていくんですよ。で、良くも悪くも変わっていくんだけど、大槻ケンヂはとにかく自分にとって良い方向で、かつ奇想天外な方向に行こうと思ってるんですよ。だから、それこそ、もしかしたら、何かロックじゃない方向に行くかもしれないし、もう音楽というフィールドも越えて、何かもっと奇想天外な方向に変わっていくかもしれない。
●自分でもその時にならないと、分からないって感じですか。
O:はっと気付いたら、なんか磯釣り名人になっていたりとかね。はっと気付いたら、スターボウリングで演歌歌手の人とペアを組んでいるプロボウラーになっているかもしれないと言えないことはないですからね。
ただね、自分がはっと気付いたら、そういうように変化してたなんてこともあるかもしれないんだけど、そこに至るまでの道は、やはりロックであり、音楽であり、歌を歌うことだと思います。
人間、生きてる中で、分かれ道はいっぱいあって、だけれども、やっぱりそこに至る道に一本何か、自分にはコレがあるから、自分はコレをやっているから、良い方に行くに間違いないっていう信念を持っていればいいのね。で、僕の場合は、まあ当たりもはずれもあったし、動員の良い日も悪い日もあったけど、とにかく十年間ロックというものをやってきたと。そして、文章を書いて、いろいろ表現もしてきて、もう道はこれしかないだろうと。
もう、それしか無いと思うのね。一種の業とか。そういうもんですよ。嫌な日もあるし、かったるい日もあるし、どうもダメな日もあるんだけれども、とにかく表現し続けてるということを繰り返していけば、いつか本当に自分をハッピーと言わない、本当に超ハッピーな人間になれると僕は確信してるんですよ。だから、今ここにいるわけですよね。
バンドとソロの差別化なんて考えない方がいいみたい
●ご自身で、ソロの2枚のアルバムには大槻ケンヂっていう人間がきっちり表れているという発言をしているんですけど、じゃあ、筋肉少女帯での大槻ケンヂって何なんだろうと疑問も頭の片隅に浮かびますが。
0:ああ、ありますよね。でもね、そういうのはね、考えないのがいいみたいですね。面倒くさいから。そういうことを考え出すと人は悩むから。ミュージシャンは悩むのが職業みたいな部分があるんで、特にバンドにおける自分のスタンスと、ソロにおける自分のスタンスの差別化、区別化とかいうことを考え出すとねえ、ノイローゼになったりするから、考えない方がいいみたいですよ。
まあ十年間、筋肉少女帯というものをやってきたと。そういうものがあった。で、今もある。もう、それ以上でも、それ以下でもない。そこのボーカルである僕は、それ以上でも、それ以下でもない。それで、ソロをやりたい気持ちがある。それ以上でも、それ以下でもない。もうすべての物事は事柄があったら、もうそれ以上でも、それ以下でもないんですよ。
だから、筋肉少女帯をやることになったら、やる。それだけ。ソロをやるってなったら、ソロをやる。それだけ。こういう風なのが楽でいいと思いますよ。
●やっぱり職業柄、どうしても聞かなければね(笑)。
O:……そうですよね。チープ・トリックのロビン・ザンダーがソロアルバム出した時に、「ロビン・ザンダーがソロ出してどうするんだ」とみんな思ったでしょ。でも、彼なりにソロとチープ・トリックの差っていうのはあったりするわけで。
●音は違うことやってるから別に異存があるというわけじゃないんですが、気持ちの上ではどうなのかと思って… じゃあ、筋少の活動はどうなんですか。
O:筋肉少女帯はどうでしょうねえ。久ぶりにまたやりたいんですけどね。うん、やりたいですね。
●来年早々アルバムが出るんですよね。
O:出しますよ。アルバムのコンセプトもできててね。とりあえず歌詞先にしたいって考えてます。歌詞だけ先にばーって書いて、それで後は「俺、歌いに行くだけで、それでいい」って(笑)。こりゃあ楽だって思っているんですけどね。
仏教とか哲学の話しはもうやめよう
●今回のアルバムで「青春の蹉跌のテーマ パート3」から「お世話になりました」のつなぎで「いい日があるから生きていこう」というセリフの繰り返しの後、「どうもありがとう。お世話になりました」という大槻さんのセリフの流れは、アルバムのコンセプトとは違って、何だか救われない気持ちになってしまいましたよ。
O:やっぱり、なかなか救われないという思いが強いからこそ「平気、へっちゃら、ここにいるから俺が」って言いたいんでしょうね。救われたいと思う人は、つまり救われていない人だから。だからこそ「I
STAND HERE FOR
YOU」って言って欲しいわけですよ。救われている人は、このアルバムは必要ないんですよ。救われていない人が、言って欲しい言葉を考えた時に「I
STAND HERE FOR YOU」だと思って。
自分を善人だと思っている人は、お釈迦様は後回し。自分は悪い人間じゃないだろうか、自分は救われないんじゃないかと思っている人から、御仏というのは救うんだって言ってる偉い人がいるんですけどね。そういう気持ちですよね。……仏教とか哲学とかそんな話ばっかりするからいけないんだよな。本当に。やめようと思いましてね、最近。
●でもやめれないんでしょ。
O:だからね、ツアーに出るのに、ある尊敬している人が勧めてくれた哲学の手引き書みたいなのを持って来ようかと思ったんですけど、でも何かそういうのを読むと、また考え始めるなあと思ってやめて、大山倍達著の『大山空手、もし戦わば』っていうのを持って来ました。マス大山がねえ、もし大山空手とゴリラと戦ったらどっちが勝つかとか、そういう妄想をずっと書いている本なんですけどねえ(笑)。
●ちょっと意識の変革を(笑)。
O:何か、思い悩んだり、そういうのはやめようと思いましてね。
僕は合理主義型録音法を押し進める
●僕、大槻さんとお会いするのは二度目で、前は筋肉少女帯がデビューしたての時に、インタビューしてるんですよ。
O:うひゃー、恥ずかしい。
●その時に音楽の質問をいっぱいしようと思ったら、いきなり大槻さんが「僕、音楽のこと分からないんですよ。レコーディングも歌いに行くだけで、分からないんですよ」って言い出して、オロオロした覚えがあるんですけど。今は、レコーディングとかスタジオでは、どんな人なんですか。
O:同じですよ。相変わらず音楽のことは分からないから。トラック・ダウンに行って言う言葉は、ソロの時で筋肉少女帯の時とはまた違うんですが「とにかく言葉がはっきり聞こえるようにミックスして下さい」って、それしか言わないです。えーとねえ、それを3年ぐらい前から言うようになったのかな。それまでは何も言わなかったんだけど。
●それまでは何も言わなかった。
O:自分の声がはっきり聞き取れないことすら、分かんなかったんですよ。だから、今はそれしか言わないです。僕は、本当に日本で一番ミキサーさんを泣かせないミュージシャンじゃないかなあ。
●それじゃあミキサーさんは、大槻さんだとラッキー。
O:うん。それはかなりラッキーですよ。だってさあ、へたするともう一回やり直して下さいって言う人がいるじゃないですか。
●じゃあ歌入れとかはどうなんですか。煮詰まるってこととかありますか。
O:前はねえ、同じフレーズを30回ぐらい歌ってたんですけど、それって楽しくないから、1曲を4回ぐらい歌ってつないでもらう。つなぐのも僕はつながないです。デレクターさんに任せちゃう。
●でも、信頼しているとはいえ人に全部任せてしまうと、自分のイメージするものとギャップが生じませんか。
O:そこはねえ、大丈夫なんですよ。ジャケット・ワークとか、口を出さないといっても、ある程度は出すので、そういうので出来ます。だから、いい加減なんじゃなくてねえ、合理的に僕は押し進められるのね。
いつも思うんだけども、みんなとにかく合理的じゃない! 自分のバンドやいろんなミュージシャンのレコーディングを見てると、やっぱり拘りってのがそこにあるんでしょうけど、もっとねえ、合理的に素早くできると思うんだなあ。そうすればアルバムをもっといっぱい出せるし、まあでもそれは人によるんでしょうね。僕はアバウトでも伝わるものが伝われば、それでいいんだよね。
●音の世界って拘り出すとキリがないですからね。
O:そうそう。拘り出すとあんまりねえ…。あのねえ文章だと分かるんですよ。エッセイとか書いている時に文章に拘りだすと、一行づつ書くようになっちゃってねえ、逆にいいもん書けるかというとそうでもない。意外に勢いに乗ってデーって書いちゃって、ゲラになったところで直しちゃった方が面白く書けたりする場合あるんですよ。僕はとにかく合理主義型録音方法を押し進めてますね。
●じゃあアレンジとかもアレンジャーに大雑把に「こんな感じで」って話をするんですか。
O:ちゃんとねえ、録音する前に1曲ずつについて文章で書いちゃうの。「天使たちのシーン」では、ドラムはこうで、ベースはだれで、こんな雰囲気で、こんな感じで、ここではこうなってって文章にしちゃう。それを現場の人に渡すの。でも、そこで伝言ゲームみたいになっちゃって、言った通りにならないんですよ。そこが、面白いなあと思うからいいの。
次はプロモーションなしで売れるアルバムを…
●結構ソロアルバム作りを楽しんで、健全な精神状態になっているようですが、ソロのライブも十分に楽しんでやってますか。
O:はい。って言うか、何でも楽しいと思うようにしているんで。
●やっぱり、筋肉少女帯でステージに立つ時とは、意識の持ちようは違いますか。各メンバーの個性がぶつかり合うのと、自分だけがフィーチャーされる違いとか…。
O:何でも同じです。とにかく僕に与えられた仕事というのは、ステージに立って、客席に人が多かろうが、少なかろうが、来てくれた人に生きる希望を捨てささない一時を与えることだから。それさえやれば、後は何も問題が無いわけだから。
別にそれがソロでも、筋肉少女帯でも、それこそ電撃ネットワークに加入しても、大川興業に入ってもいいわけだから。その僕の仕事ってのを、マイ・ジョブってのをやりさえすれば、後はどんなふうに生きようが、死のうがいいわけだから。
●そんなたいそうな(笑)。じゃあ、ソロのツアーでも筋少の内田さんと一緒じゃないですか。内田さんとの関係には少しくらい意識の違いがあるでしょう。
O:…分かんないなあ。あんまり考えたこと無い。いやあ、単に長い付き合いというやつですね。内田君にベースをお願いしてしまう大槻ケンヂがいると、ただそれ以上でも、それ以下でもないと(笑)。
●……最後に、ソロアルバムをもう一枚作りたいという話しなんですが、もうアイデアとかあるんですか。
O:決定じゃないんですけどね。これも、コロコロ変わるからね。ただ、一つ考えているのはプロモーションをせずして、売るにはどうすればいいかと。
●プロモーションは嫌い?
O:あんまり得意じゃないです。だから、プロモーションをせずして、売るにはどうすればいいかと考えています。
[撮影・佐藤潤一]
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