真矢


真矢 Interview

ルナシーからの最後の男、真矢がいよいよソロ活動に踏み切った。他のメンバーと同様に自分の可能性を追求しているものの、彼は意外なアプローチを仕掛けてきた。周知の通り彼はドラマーなのだがスティックを握るのではなく、マイクを握ったのだ。そして、それだけではなく芸能界の仕掛人である秋元康と手を組んで、まだ見ぬ新たな自分の探索を行ったのである。  また、ドラマー真矢としては『メロディー』というタイトルを掲げたビデオ作品を発表し、『RHYTHM MANIA』と題したドラムセミナーのツアーも展開。しかし、そこではドラムのたたき方を伝授するのではなく、彼はもっと基本にあるプレイヤーとしてのマインドを伝えようとしている。

音楽が仕事になっちゃ 絶対ダメだと思うんですよ

●真矢さんのソロ活動がやっとスタートしましたが、ルナシーの活動停止から半年以上がたってますよね。
真矢:立ち上がりがすごく遅れたっていうのがあるんですよ。今年に入って3月末ぐらいまで何もせずに「何をやりたいのかな」とか「何をやろうかな」といろいろ考えていた時期があったんです。で、いっぱいやりたいことが出てきて、「これはまとまんねえや」と。だったら逆にやりたくねえことを出そうと思ったんですよ。まず、ユニットを組んでドラムをたたいて作品を作りたくない。というのは、ドラムをたたいて音楽の作品を作るのはルナシーに取っておきたかったんで、それだけはやりたくないなと。あとはやりたいことを思い付いたら、それをやればいいやみたいな感じで。
●ユニットを組んでドラムをたたきたくないというのは、ドラムをたたくことに関してはもうルナシーで充分満足してるから?
真矢:そうですね。だからドラムをたたいて作品を作ることはやりたくなかったわけで、別にイベントとかでたたいたりね、自分のビデオを作ったりね、そういうことは全然OKだったんです。
●そんな真矢さんから届けられた初めての音源っていうのが、西城秀樹さんのトリビュートアルバムで、そこではドラムもたたいているんですけど、歌にも挑戦されましたよね。
真矢:はいはい(笑)。トリビュートアルバムはですね、秀樹さんのマネージャーとかそれに関わった大島暁美さんとかから電話がかかってきて、「あ、いいよ全然」とか言ってて、もうインストでやるもんだとばっかり思ってたらですね、よく聞けば歌ってほしいと(笑)。「いい」って言っちまった分には、歌わなきゃいけねえんだろうなと思って、それで歌ったわけなんですけどね。でも、自分が歌って作品を作ったことないし、おもしろそうだからいいかなって。
●じゃあ”遊び“みたいな感じで?
真矢:ホントに「遊んで歌うんだ」みたいな遊び心でね。
●でも、今までもテレビのバラエティー番組に出たりしたし、今のソロ活動でやっている展開とかを考えてみたら、真矢さんの中には常に”遊び心“がありそうですね。
真矢:ルナシーをやってるときも、常にいい意味で遊んでますからね。それがないとね、すごくつまんないし、こんな音楽をやってて、それが仕事になっちゃ絶対ダメだと思うんですよね。それだけはホント避けてる。
●仕事になるとやりたくなくても「やらなきゃいけない」ってなりますからね。
真矢:そうそう。そうじゃなくて、まず自分が「やりたい!」ってアクションを起こさないと。趣味って絶対そうじゃないですか。だから趣味って自分が「やりたい!」と思ってとびつきますよね。音楽をやってるのは最高の趣味だという感覚でやってるんで、何かしら遊び心っていうエッセンスが入ってますよね。
●それは『メロディー』というタイトルのビデオにも受け継がれていますよね。教則ビデオのような感じなんですけど、実はドラムのテクニックじゃなくて、スティックを握る前のことを教えているみたいですし。
真矢:そうですよね。俺って教えるのすごく苦手だし、多分俺が教えても俺のコピーロボットにしかなんないし。それに自分が例えばいわゆる教則ビデオって呼ばれてるやつを見ても、最後まで見たためしがないんですよ。だから、そういうビデオは作りたくなかったんです。「こうたたけばこういうふうな音が出るんだよ」っていうビデオはすごく多いけど、音楽ってそうじゃないし、「こういう気持ちがあるから俺はドラムをやりたかったんだ」みたいなことってすごく重要じゃないですか。そういうことを言いたいなと思って。
●ビデオの中で自然とセッションというか、屋外でドラムをたたいていたじゃないですか。あの映像からは今言われたような真矢さんのパッションが感じられますよ。
真矢:そういうふうなものってほんとに音楽の原点だと思うし、その場で感じた気持ちをドラムで表したんです。人間って感動したり喜んだりするとバーって拍手しますよね。そういうのってすごく音楽の原点っていうか、始まりだと思うんですよ。そういう感覚ですよね。
●そのビデオを見てて一番印象的だったのが、「おもしろければ、ドラムセットが傾いていても、燃えていてもいい」という言葉なんですよ。
真矢:そうなんですよ。だからいわゆるドラムソロって言われてても、みんなテクニックの発表会になっちゃってますよね。ドラマーの人はおもしろいかもしんないけど、いくらテクニックをやっても、やっぱり観てる人がおもしろくなければ成り立たないと思うんですよ。だったら何にもたたかないで、ドラムを燃やすだけとかの方が全然おもしろい(笑)。 今生きてる自分を すべて歌に乗っけて出した
●今度はシングルの話をうかがいたいのですが、まず驚かされたのが、秋元康さんのプロデュースなんですよね。
真矢:すごく真矢っていうキャラクターをだれかにいじくってほしかったんですよ。秋元さんっていわゆるロックばっかりやってるプロデューサーじゃなくて、全然違うハタケもいろいろやってますよね。そういう違うエッセンスで、いじくってほしくて、新しい風を自分の中に吹かせてほしくて、勉強したいなっていうのがあったんです。で、まず提示したのは「ドラムたたかないよ、作詞しないよ、作曲しないよ、歌だけ」みたいな感じで(笑)。
●「落下する太陽」が手元に届いたときは、どんな感じだったんですか。
真矢:やっぱりね、(後藤)次利さんとかですからね。ビッグな人になると、納得した作品がガツンとくるわけですよ。だから何も違和感なく、「これカッコいいな」みたいな感覚で入っていきましたけどね。
●次利さんと言えば、ニューミュージックとか歌謡界を作ってきた人じゃないですか。だから曲調はロックなんですけど、歌謡曲とかニューミュージックとかの世界を引きずってるところがありますよね。
真矢:ありますよね。俺、ベストテンとかトップテンとかあったじゃないですか、そういう番組ってめちゃくちゃ好きだったんですよ。そのころの音楽の印象的なメロディーと、今考えればすごく下世話な歌詞やストレートな歌詞がめちゃくちゃ好きで、そのエッセンスってありますよね、俺の歌に。だから秋元さんらと、そういう音楽が好きだったから、カラオケで歌いやすいとか、いわゆる80年代とか日本の大物のポップ、歌謡ロックみたいな、そのころの音楽をやろうよって言ったことは確かですよ。
●また、ボーカルに挑戦したことによって、ボーカリストという立場でサウンドを聴いたというか、RYUICHIさんの気持ちが分かったというようなことは?
真矢:レコーディングで隆ちゃんってこういうことを思って…例えば「こういうふうにバッキングを聴いて歌ってるんだ」っていうのは、なんとなくね。それは人それぞれ違うんでしょうけど、なんとなくそういうのは見えてくるんですよ。それでやっぱりね、まず自分がその世界になりきるっていうのが難しくて、隆ちゃんって難なくやってのけるじゃないですか。やっぱりすごいなとは思いましたよ。「落下する太陽」を1曲目に吹き込んだんですけど、一番初めに歌うときって、やっぱ恥ずかしいんですよ(笑)。ブースに秋元さんはいるわ、次利さんはいるわで、緊張するじゃないですか。なかなか歌に入り込めなかったのを覚えてますね。
●入り込むためには、やっぱり何回も歌い直したんですか。
真矢:歌い込むしかないですよね。例えば歌詞とか前の日とかに届いても、俺、読まないんですよ。歌とかも当日まで覚えてこないんです。なぜかっていうと、当日その場で感じたことを歌いたいんで、だから譜割りとかもその場でやって、歌い込んでみたいな感覚だったですね。その日のテンションがめちゃくちゃだったら、めちゃくちゃな歌しか歌えないと思うんですけど、それでもそっちの方がいいかなと思って。賭けみたいなもんですよね。
●それは自分にプレッシャーをかけて、もっと自分自身の感情を引き出すみたいな?
真矢:そういうのはありますよね。
●このシングルで見せたニューミュージックを感じさせるコンセプトって、次のシングルやアルバムにも通じることなんですか。
真矢:いや、これがですね、やっぱり秋元さんと自分がやったら、何らかの形でおもしろいものを残さないといけないじゃないですか。発想を変えてね…例えばアルバムとか10曲あるとしたら、10人違うキャラクターの俺がいて、もう全く歌の主人公の性格が違うみたいな感覚で、すごいバラエティーに富んだアルバムなんですよね。でも、全部俺から出したもんなんだよって。
●そういった新しい自分を秋元さんに引き出してもらった?
真矢:そうですね。だから秋元さんがおっしゃってるように、「真矢は、はたしてどういう性格なんだろう」っていうのは、ホントに俺もそういうふうに思えてきたんですよ。今までは真矢っていうと、明るいキャラクターで、強そうで、何も悩みごとがなさそうみたいなのがあるじゃないですか(笑)。もしかしたらそれを自分が無理に作ってきた一面でもあるかもしんないと思い始めちゃって、最近。だからこういう切ないような感じの曲を歌っても、自然に自分からパーって出てくるし、「ああ、俺ってこういうところもあったのかもしれない」って、「俺って自分の性格の中で、どういう性格が大半を占めてるんだろう」って何か分かんなくなっちゃった(笑)。「これも俺? これも俺?」みたいな、自分を探してるような感覚ですよね。
●このソロアルバムっていうのは、そういう意味でも「これが俺なんだ、見てくれ」っていう作品になるんですかね。
真矢:自分のハートの中から出さないといけないんで、今生きてる自分をすべて歌に乗っけて出したっていうのはありますからね。「こういう一面もあったんだ」みたいな感覚? だからそういう俺の、真矢の今まで見せたこともない多面性を感じてもらえばすごくうれしいかな。 ストレスをためないで ルナシーに臨む
●『RHYTHM MANIA』と題されたドラムセミナーなんですけども、こういうことをツアーを組んでやるのも珍しいですよね。
真矢:そうですよね。でも、ビデオのときも言ったみたいに、ドラムセミナーとかクリニックっていうと、「こうたたきなさい」っていうのがすごく多いですよね。「でも、そうじゃなくて…」っていうことが言いたいんですよ。例えば300人とか400人が集まるじゃないですか。集まった人分の300通りの性格があると思うし、一人ひとり絶対違うと思うんですよ。そういうキャラクターをすごく大切にしてほしいみたいなことをすごく言いたくて、行ける範囲でツアーを組んでやったりはしてますけど。
●ここでもビデオと一緒で、テクニックじゃなくてマインドの部分を伝えているのですか。
真矢:マインドの部分もすごく言いたい。だから音楽をもっと自分にフィードバックさせて、素直に聴こうよみたいな感じ。みんなが「これ、泣ける音楽だよね」って言って、自分は「これ、全然泣けないよ」と思う感覚ってあるじゃないですか。そういう感覚をすごく大切にしてもらえればいい。だから自分の感性っていうのをしっかり持って、自分で選んでいって楽器をやってもらえば、もっと素晴らしいプレイヤーになるんじゃないかなと思っているんですよ。
●いよいよ今日の大阪がそのファイナルなんですよね(このインタビューは大阪のセミナー前に行われた)。
真矢:もうね、どんどんセミナーの時間が長くなっていくわけでこざいますよ(笑)。自分の中でどんどん盛り上がってきてるんでしょうね。非常におもしろいですよ。最後にギターとベースを呼んでセッションバンドみたいなことをやっているんですけど、それがどんどん演奏時間が長くなってきてね。
●それもビデオのときに言われてたように、その場で感じた気持ちでプレイしてるんですか。
真矢:全部アドリブ。それってバンドサウンドの原点じゃないですか。そういうのをみんなに見せてあげたいなと。
●また、大阪が終わった後には『舞』と題された公演が予定されていますけど、これは青山円形劇場というライブハウスじゃなくて、お芝居の小屋でやられるんですよね。
真矢:青山円形劇場ってすごく好きな小屋なんですよね。いろんな角度からドラムを見てほしいし…逆に言うと俺が360度人に囲まれてみたかったというのがありましたよね。それに青山円形劇場ってすごく小さい小屋なんで、生音とかって感じるじゃないですか、風も感じられるじゃないですか。そういう風も感じてほしいんですよ。
●今回のソロの作品とかドラムセミナーでやってることと、それ以前のルナシーが活動停止して3カ月間何もしなかったことも含めて、真矢さんのソロ活動だと思うんですけど、ここでやっぱり経験したことっていうのは、いいお土産を持ってルナシーに戻れそうですか。
真矢:それはもうめちゃくちゃ。そういうのがないと逆にこういうことはやってないんでね。人それぞれ、隆ちゃんは隆ちゃんで自分が一番勉強ができるようなスタンスでやってるし、それはSUGIZOしかり、JもINORANもしかりですよね。一人ひとりが一番勉強ができるようなスタンスでやって、お土産を持って帰ればいいかなと思うんで、俺は自分のスタンスっていうのを1日1日満足して楽しんでますよ。得るものもいっぱいあるんで、ストレスをためないでルナシーに臨む? それが一番のお土産だと思うんで、でっかいお土産を持って帰れるんじゃないですかね。
●それにルナシーのメンバーそれぞれがやっているソロ活動の音なりアプローチの仕方とかって、みんな”らしい“展開じゃないですか。だからこういう人らが集まって、あのルナシーのサウンドができてたんだっていうことも確認できましたよ。
真矢:俺も分かりました(笑)。っていうか、改めてソロになってみて、ルナシーってホント一人ひとりが個性的なバンドなんだなと思った。一人ひとりが好きなことをやってもカッコいいバンドなんだなって、自分も感じましたね。
●みんないいお土産を持って帰ってきそうですよね。だから、すごくルナシーが動き出すのが楽しみです。
真矢:もう、めちゃくちゃ期待して待ってて下さい。今までの100倍、200倍、カッコいいバンドになって帰ってくるんじゃないですかね。


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