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氷室京介が3年半ぶりにステージに帰ってくる。その日を待ちこがれていたファンは秒読みに入ったライブのシーンを思い浮かべ、膨れ上がる興奮と緊張を必死で抑えているのではないかと思う。「できればすぐにでもやりたい」と前回のインタビューでライブについて語っていた氷室の言葉が頭から離れない私は、ツアーへのプランを進めている彼が今、どんな気持ちで3年半ぶりのツアーを迎えようとしているのかが気になって仕方がない。「もしかしたら彼の中には初めてステージに立つときの衝動が再びわき上がっているのではないか?」とさえ思えてしまう。「とにかく確かめたい!」という思いを胸に、彼の住むロサンゼルスの自宅にまで押し掛けた。そんな私を彼はフレンドリーに迎え入れてくれ、心地良く太陽の光が差し込み、青空がのぞくリビングルームでインタビューは行われた。 |
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●前回のアルバムインタビューの最後で、氷室さんがライブについて「できればすぐにでもやりたい」と言われていた言葉が印象的だったんですが、7月から始まるツアーに対して、氷室さんの中にはもしかしたら初めてステージに立つときの興奮や緊張が今どんどん加速してるんじゃないかと思うんです。そこで、氷室さんがこれまでに歩んできたいくつかのライブの話を聞きながら、3年半ぶりのツアーに対する思いを探ってみたいと考えています。まず、初めて音楽的なことでステージに立ったときのことを覚えていますか。 氷室京介(以下氷室):最初は…、俺達が子供のころって吉田拓郎さんとか、泉谷しげるさんっていうフォークをやってた人達が頑張ってたんだよ。当時、俺は小学生だったんだけど拓郎さんの大ファンでね。そのころは日本にロックバンドっていうのがあんまりなくて、それこそキャロルぐらいしかなかった。キャロルを知る前に俺はギターを覚えてたんで、最初に人前でプレイをしたのは拓郎さんの曲か何かを生ギター1本で友達を集めて、あんまりカッコ良くないんだけど、それこそアマチュアのレベルでやったのが初めて。 ●最初にバンドでやったライブは覚えていますか。 氷室:覚えてる。確かね、もうそのときすでにオリジナルもあったけど、ほとんどキャロルのコピーをやってたかな。俺はレスポールを持ってギターを弾きながら歌ってたんだけど、ギターがすごい邪魔だったっていうのをよく覚えてるけどね。自分がしたいステージングっていうのは、今みたいなスタイルなわけじゃん? それにはギターがあると集中できないんだよね、やっぱり。今は逆にステージアクションの色をつけるためにギターを使ったりするけど、当時はアマチュアだからさ。全部が一生懸命だからどうしても歌にフォーカスするためにギターが邪魔で、「邪魔だな」と思いながらやってたのはよく覚えてる。 ●そして、最終的には楽器を持たなくなっていくんですね。 氷室:そう。アマチュアバンドとして人気が出たあたりから…、っていうか結構すぐに人気が出ちゃったのよ。プロになるためのコンテストなんかに出たりすると、プロのレコード会社からいくつもスカウトされたりしてて、そのころになったら「ギターを持たずにやった方がいいや」っていうことで、ギターはギタリストを入れてやってたよね。で、そのころはコンテストに出て絶対スカウトに来るなと思ったらホントに来たりとか、思い込んでるそのパワーで引きつけてたのかもしれないね。そういう信じて疑わない無垢(むく)さに妙にエネルギーがあったんじゃないかな。 ●全く迷いがなかったってことですね。 氷室:全然ない。若いころは全然迷いなんかなかったよ。そのときから松井(常松)と一緒にバンドを組んでたんだけど、バンドを作って4カ月ぐらいでコンテストに出て、それでもう3社か4社から「プロになりませんか?」ってスカウトがきてたからね。 ●そしてプロとして活動をすることになる氷室さんには BOッWYというバンド時代があって、ソロアーティストとしての時代がありますよね。それぞれでライブを行ってきた中で最初にものすごく緊張したライブは覚えていますか。 氷室:緊張っていう部分に関していえば、毎回めちゃくちゃ緊張してるよ。それは何年やってても。1本1本がすごい大事だからさ、毎回緊張してる。ただオーディエンスと1つになった初めてのライブっていうのはよく覚えてるけどね。いつもね、 BOOWYを組んでから…、アマチュアバンドのころは別で、みんな女の子が集まってキャーキャー言われるのが気持ちいいだけのそのレベルじゃない? プロになってから BOOWYで新宿ロフトでずっとやってるころに、どうしてもオーディエンスと1つになれない…、歌詞もアイロニック(皮肉っぽいもの)だったり、すごく攻撃的だったりしてたからっていうのもあるかもしれないけど、それが何かの瞬間に1つになるっていうのを体験した一番最初のライブは覚えてる。それは無になったときなんだよ。ステージで歌っていて、例えば動きとかをいろいろ考えてやってるときは、(観客との)隔たりが絶対取れないんだよね。それが何かの瞬間にトランスして自分が無になったときに、オーディエンスとのバイブレーションが一緒になるっていうのを感じた。で、1つになれてからは結構ダーッと登るのが早かったよね。 ●それまでは、どうしたらそこに行き着けるのかを考えながらステージに立っていた感じだったんですか。 氷室:うん、いろいろ考えてた。その1つになる方法にはいろんな形があると思うんだけど、基本的にライブの一番大事な要素っていうのは、たくさん集まってる人のエネルギーが1つになるってことだと思うからね。 ●そうなったときに本当の意味でのライブのだいご味が味わえますものね。 氷室:そうだよね。 ●ライブは毎回緊張するということですが、ライブ前はどういう状態なんですか。 氷室:いや、こういう状態ですよ(笑)。今回もすっごい緊張してる。今回は特に、スティーブ(・スティーブンス、G)とマーク(・ショーマン、Ds)っていう外国人が入るじゃない? 外国人と日本人のグルーブって、やっぱ違うのよ。だから、それが俺のイメージの中で音楽的なことをいうと、スティーブはどっちかって言えば前のめりなベースが好きなんだけど、今回参加する西山(文明)くんのベースは決して前にのめっていくタイプのベーシストじゃないし、ドラムのマークはすごいタイトだしとかって、いろんなファクター(要素)があるわけじゃない? それをどう俺の歌でつないでいくかっていうのを考えると、まだリハーサルは始まってないんだけど冷や冷やもんだよね。でもそれも毎回のことだから。いつもライブは大変なことがあって、それを結局最終的にみんなの前にドンと出るときには、すべてのことをフィギュア・アウト(理解)して、そこで何のエネルギーが生まれるかっていうところだから。決してうまい演奏を聴かせることがベストなわけじゃないと思うからね。それぞれが真剣にやってるエネルギーがどんな形でみんなに伝わっていくかっていうことだと思う。そういう意味では、意気込みは今回すごいあるから、絶対いいステージにしようと思ってるよ。でも今回マーク・フィッシャー(ローリング・ストーンズ、ピンク・フロイド、U2、スマッシング・パンプキンズなどのトップアーティストをクライアントに持つ、常に独創的なステージをデザインしている建築家&デザイナー)も絡んでるし、照明のアービー(・ローゼン)は女の人なんだけど、その人もピンク・フロイドやU2とかを実際やってる人だから、それなりにスケール感のあるプランニングを立ててくるだろうから本望だよね。 ●その話を聞いているだけで緊張感がこちらにも伝わってきますが、ツアーが始まってからライブごとに起こる緊張感をほぐすために、いつも心がけていることはありますか。 氷室:今までは緊張をほぐすために、次にやるライブをどれだけ良くしようかっていうふうにストイックになっていくことが一番の早道だったんだけど、それは今回も変わんないかもね、きっとそうだと思うよ。今回は飛び飛びのスケジュールだから、本当は京都でライブをやったりさ、大阪方面に行ったら琵琶湖に釣りに行ったりしたいけど、多分そんな余裕ないだろうね。 ●また以前のライブについて聞きたいのですが、氷室さんにとって忘れられない感動的なライブを味わったときのことは覚えています? 氷室:新宿ロフトの…、いつっていうのははっきりは覚えてないけど、さっきの最初の1つになったライブだね。そのときに初めてプロになったんだと思う、きっと。それまでのライブはどんなに人気があってもアマチュアのレベルなんだね。そのときに初めて自分が伝えたいことと会場が感じてることが1つになれてるっていうね。 ●そのときに氷室さんの中でプロとしてのライブがどういうものかが分かった? 氷室:うん。自分がやりたいようにやればいいんだと思った、そのときは。ナチュラルに自分のエネルギーやエモーショナルな部分が出てくる通りに表現すればいいんだっていうふうに思ったよ。 ●では、ライブでの恐さとか、つらさを味わったライブはありました? 極端な話をすると「二度とステージに立ちたくない!」と思うほどのライブを経験したとか。 氷室:具体的に答えるのは難しいな。具体的にはないよね。「二度と立ちたくない!」と思ったことはない…っていうのは、そういう要素のことで何かトラブルがあったとしても、そういうふうな考え方はあまりしないから、俺。「それを克服するために次からどうしよう?」っていつも学習していくからね。そういう意味ではさっき言ったように、毎回恐いし、これからもずっと多分恐いだろうし、毎回恐いことに挑戦するんだから毎回命がけでやってるつもりではいるし。それはライブだけに限らずだよね。レコーディングでも、ビデオシューティングでも毎回ケンカしながらやってるもん。 ●そして自分とも戦っていると? 氷室:そうそう。自分で「これで満足だ」っていうさ、クリアするレベルを低く設定しちゃうと、案外気持ちいいテンションでずっとできるんだろうけど、俺はそれをあまり良しとしていないんだよね。いつも自分の作品はまだまだ行き切れてないと思ってるし、今回のビデオ(ベストアルバム収録の新曲「炎の化石」)にしてもさ、ビバリーも言ってくれてたけど、日本のビデオで一番いいと俺も思うよ。人が言ってくれてすごくうれしいし、俺だって日本のビデオの中で最高だと思うけど、でも俺が撮りたいものはあんなもんじゃないんだよね…っていうレベルでいつもいるつもりだから…、ライブに関しても、作品に関してもね。 ●そう思う気持ちは、これから先もずっと変わらないんでしょうね。 氷室:多分ずっと変わらないと思う。どんなにいいライブをやっても、そこで満足は多分しないんだと思うよ。病気だよね、俺の(笑)。絶対満足は…、自分が作るものに関しては満足できないよね、良いことだけど。そういう何て言うのかな…、自分で言うのも何だけど、妙なストイックさが良い結果につながってることの方が多いもんね。 ●逆に満足してしまうということは。 氷室:満足しちゃったらそこで終わっちゃうからね、多分。ものが何も出てこないと思うよ。作りたいものも出てこないと思うし。 ●では、氷室さんがライブをすることの意味を再確認したライブというのは? 氷室:それはね、前回の『SHAKE THE FAKE』ツアーが終わってから3年半期間が空いてるじゃない? この3年半の間にライブが自分にとってどのくらい大事だったかっていうことをすごく感じてる。やっぱり、これまではライブでエネルギーを発散することで自分のエモーショナルな部分を処理できてたんだなっていう。だから、みんなに会いたいよ、とにかく。この間ラジオに出てさ、人がたくさん集まってくれたりっていうのを聞いても、あまりピンとこないもんね。俺、もともとしゃべる人じゃないし、いわゆるジャニーズ系のああいう人達とは違うし、あそこでしゃべってる俺を見たからって、そんなのなんぼのもんじゃない? だから早くステージで歌ってる俺を見てほしいなっていう。 ●この間、 BOOWYのベストアルバムが出たときにフィルムコンサートを各地で行っていたんですけど、昔のライブの映像だけどそれを初めて観た私は素直な感想として「氷室さんはステージに立たなきゃいけない人だ」と改めて思ったんですよ。 氷室:それ、どんなコンサートのフィルムを流したの? いつの? ●今までに発表されているライブの映像を編集して1つにまとめてあるものと、初めて紹介するという映像もありましたが。 氷室:俺は BOOWYのことに関しては何も知らない状態なんですよ。 BOOWYに関しては、俺にとってヒストリーだからね。それについてはあんまり興味ないんだよ。それをさ、例えば「若手のバンドが BOOWYのファンですよ」とかって言ってくれることは、もちろんイヤではないけど、俺が見てるのは後ろより前だからさ。今、前にやりたいことがいっぱいあるし、そっちの方が興味あるんだよね。だから BOOWYのプロモーションでどんなことやってますっていう報告はいろいろ受けてるんだけど、もう素通り、こっちの耳から聞いてこっちの耳から抜けていくって感じで、「何でも好きにやっていいよ」って。レコードも売れてるらしいね、とかさ、そんな程度だよね。 |
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